見積りの妥当性(2)
前回の「見積り」の続きです。
価格妥当性の判断は、やはり、難しいですよね。
先ず、労務費について、お話します。
業務委託契約の場合、準委任型では、労務費のみの見積が殆どですが、成果物をもって費用を支払う請負契約では、「一式」という括りで労務費を見抜くことが難しいことがあります。
そのような場合であっても、内訳を確認していくことで、どの程度の人件費が見積もられているのか読み取れますので、ここでは、その読み取った後の「労務費」について触れます。
(1)労務費
ずばり、「人材単価」×「所要時間」です。
でも、これが難しいです。
「人材単価」はスキルレベルによって変わります。
「所要時間」もスキルレベルによって変わります。
ということは、発注者は、どの程度のスキルレベルであれば、どのくらいの時間で、その仕事を全うできると想定しておく必要があります。そのうえで、請負業者が、どの程度のスキルセットを保有した人材を割り当てているのか、推察する必要があります。
「高スキル×短時間」と「低スキル×長時間」は、一見、同じように見えますが、請負期間が長くなると請負業者の社内管理日数が増えますので、プロジェクト責任者の所要時間が増えます。つまり、短時間で終わらせる方が安価になりやすいです。
(2)人材単価
妥当性の見極めは非常に難しいです。
なぜならば、発注者側で指定することはできず、通常、請負業者の中で、社内基準が設定されているからです。
とは言っても、発注者の仕事を全うするためには、見極めなければなりませんので、ここでは、私の基準を少しご紹介します。
① 自社の社員が担う仕事のケースと下請けに出すケースで人材単価を変える請負業者もいれば、変えずに同一単価で提示することもありますので、先ず、自社の社員で担う業務と下請けに出す業務を問い合わせます。そこで、下請けに出す業務の人材単価が同じであれば、業務転売で利益を出す会社と認定し、適正な価格の提示を求めます。
② 自社で採用している派遣社員の単価を把握し、予め、スキルレベル別に整理しておきます。この仕事であれば、どのレベルの派遣社員で担うことができるか、決めておきます。そして、見積りと比較し、極端な単価差異があれば、請負業者にスキルセットを確認します。
③ 転職サイトや口コミサイトで、請負業者の給与水準を把握しておきます。もちろん、会社は、社員に渡す給与の他に、様々な費用をかけていますので、2倍程度の額をイメージしておきます。そして、見積りと比較して判断します。
④ 毎年契約している請負業者の場合、物価上昇率を加味していると主張することもありますので、物価上昇率は把握しておきましょう。
⑤ 外資系企業が関わる取引の場合、為替変動を理由に価格アップをした見積りを提示することがあります。請負業者と外資系企業の取引通貨、外資系企業の取引対象業務、為替基準日等を確認し、請負業者に騙されないようにします。
⑥ ④と⑤を混在して見積り説明を行う請負業者もいます。その場合、④と⑤を区分けして説明を受けるようにしてください。
①~⑥までの対応を見積り受け取って直ぐに行い、相手方に問い合わせを行うと相手からは一目を置かれる立場になるでしょう。そうなれば、この人には誤魔化しがきかないという勲章が相手方の中で与えられ、以後の見積り分析は楽になります。
【本日の振り返り】
・「高スキル×短時間」を優先したい。
・「為替変動」と「物価上昇率」の言葉に騙されない。